走行性能

四代目エスクードの走行性能を語るうえで欠かせないのが新世代四輪制御システム「ALLGRIP(オールグリップ)」である。このシステムはエスクードのほかにSX4 S-CROSSにも搭載されているが、悪路走破性をより高めるためにエスクードだけの専用制御も設計されている。

パワートレインのラインナップは四代目が誕生した当初は1600ccNAの2WD(YD21S)や1600ccNAの4WD(YE21S)があったが、現在(2020年1月現在)は1400ccターボの4WD(YEA1S)のみとなった。トランスミッションはともに6速ATが採用されている。

四輪制御システム「ALLGRIP(オールグリップ)」

ALLGRIPは「電子制御4WDシステム」「4モード走行切替機能」「車両運動協調制御システム」の3つの技術からなる、スズキ独自の四輪制御システムである。

ALLGRIPモードスイッチ

電子制御4WDシステム

車両の走行状態を各種センサーからの情報をもとにトータルに監視。挙動変化を予測し、車両が不安定になる前に対処するフィードフォワード制御を行なうことで 優れた走行性能を実現する。

4WDコントロールシステムにリヤドライブカップリングユニットを採用し、リヤデファレンシャル前部に設けた。
4WDコントロールシステムは、4WDコントローラー、リヤドライブカップリングユニット、ALLGRIPモードSW、リヤドライブカップリングユニット温度センサー及びトランスファ油温センサーで構成されており、4WDコントローラーはECM、TCM (A/Tコントローラー)、BCM及びESP®コントローラーなどとCAN通信を行い後輪の駆動力を制御する。
リヤドライブカップリングユニットは、4WDコントローラーからの電流値に応じてリヤドライブカップリングユニット内のコントロールクラッチの締結力を変え、後輪へ駆動力を伝達している。

リヤデファレンシャル

4モード走行切替機能

4WDコントロールシステムは「AUTOモード」「SPORTモード」「SNOWモード」「LOCKモード」があり、ALLGRIPモードSW操作により切替えが可能である。なお、ALLGRIPモードSW信号はBCMに入力されCAN通信により各コントローラーに送信される。

AUTOモード

基本的に2WDで走行する燃費重視のモード。タイヤのスリップを検知した場合、後輪に駆動力を配分する。タイヤのスリップが収まると2WDに戻る。

SPORTモード

4WDを積極的に活用し、コーナリングでの旋回性を向上させたモード。低中アクセル開度でのアクセル-トルク特性を変更し、エンジン回転数を高く維持して加速力を向上させる。

SNOWモード

雪道や未舗装路など滑り易い路面に適したモード。4WD走行を基本として、低μ路でのトラクションを向上させ、スリップしやすい路面でも安定性を高めている。

LOCKモード

ぬかるみや砂地、雪道などの低μ路で発進が困難な場合に選択するモード。空転している車輪にブレーキをかけ、空転していないタイヤに最大限のトルクを配分。
LOCKモードにはSNOWモード状態からでなければ切替え出来ない。
なお、車速が60 km/h以上になると、自動的にSNOWモードに切り替わる。

車両運動協調制御システム

4WD制御と電動パワーステアリングを協調制御するシステム。前後輪への最適なトルク配分とハンドル操舵トルクアシストにより、コーナリング中のアンダーステア傾向やオーバーステア傾向(車両横滑り傾向)を抑制して運転操作をアシスト。それでもスリップや横滑りが発生した場合にはESP®が作動して走行安定性を確保する。

車両コンピューターは車速及びステアリング角センサーからのステアリング操舵情報などから、ドライバーの意図する目標ヨーレート(回転方向の速度)などを算出。目標ヨーレートと実ヨーレートの差などから車両の挙動を判定して、車両旋回時にオーバーステア、アンダーステア傾向と判定した場合、車両運動協調制御を実行することで、その傾向を抑制し、走行安定性を補助する。更に、車両運動協調制御では補えない程、車両が不安定な状態(強オーバーステア、強アンダーステア)に陥った場合、ESP®制御に移行する。

アンダーステア傾向時制御イメージ

M16A型 1.6L DOHC VVTエンジン(DBA-YD21S・DBA-YE21S)

DBA-YD21S・DBA-YE21SにはM16A型NA-VVTエンジン(ボア78.0 mm × ストローク83.0 mm、総排気量1.586 L)を搭載し、可変吸気システムが採用されている。

シリンダーヘッドは2カム4バルブとし、軽量で放熱性に優れたアルミ合金製を採用している。形状は中央に点火プラグを配置したペントルーフ型燃焼室、クロスフロー式の吸排気レイアウトにより、燃焼効率の向上を図っている。

M16A型エンジン

K14C型 1.4L DOHC VVTエンジン(CBA-YEA1S・4BA-YEA1S)

CBA-YEA1S・4BA-YEA1Sは1.4L直噴ターボエンジン、K14C型を搭載。最近のパワートレインで一般的な「ノーマルオープン制御」技術を採用。排気ガスを利用して、圧縮した空気をシリンダー内に強制的に送り込み、高出力を発生する。過給圧はウエストゲートバルブの開閉により排気ガスの流入量を調節することで緻密にコントロール。加速時は瞬時にローギヤレンジに変速することで軸トルクを稼ぎ、その間にエンジン回転が高まる仕組みになっている。

K14C型エンジン